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Mitsui Fudosan Building Management Co.,Ltd.
「ビジネスシーンの明日を変えていく」
New Office Project
これは、三井不動産ビルマネジメントがブランドメッセージとして掲げている言葉だ。
オフィスビルを運営・管理する企業として自ら率先して新しい働き方に取り組み、新時代のオフィスのあり方をお客様に提案したい。
そんな熱い思いを具現化するため、2018年、日本橋への本社移転に伴うプロジェクトがスタート。
現在、多方面から高い評価を得ているこのプロジェクトの成功の鍵は、チーム内外に浸透した“自分事化”にあった。

2018年、2年後の本社移転を目標に、三井不動産ビルマネジメントの新オフィスづくりに向けたプロジェクトが発足。「ビジネスシーンの明日を変えていく」というブランドメッセージを掲げる三井不動産ビルマネジメントに相応しい新しいオフィスのあり方の模索が始まった。企業の働き方を変えていくコンサルティングを手がける三井デザインテックは、先進的な働き方を体現する企業に変わろうとする三井不動産ビルマネジメントのコンサルティングを担当するにあたり、経営層へのインタビューや社員へのワークショップなど、さまざまな施策を実施。三井不動産ビルマネジメントが抱える働き方に関する課題を抽出し整理することに時間をかけて取り組んだ。この“課題抽出と整理”が、このプロジェクトにおいては何よりも大事だったと三井デザインテック シニアコンサルタントの木下貴博氏は語る。
「三井不動産ビルマネジメント経営層の“ビジネスシーンの明日を変えていく企業となる”という思いは、当初よりとても強いものでした。しかし当時はその思いが必ずしも社内全員に共有されていませんでした。オフィス移転に大切なのは、目指すべきゴールを明確にして“自分事化”として考えられるかどうかです。そのためにはまず、三井不動産ビルマネジメントが抱えている働き方の課題を抽出し、顕在化させ、しっかりと認識してもらうことが大事でした。そして課題を解決するためにどういったプランニングが必要か、どのようなオフィスがいいのか、つまり自分たちはどうありたいのか。問いかけ、ミーティングを重ね、提案を進めていきました」
木下氏と一緒にコンサルタントを担当した仲清花氏も、今回のプロジェクトは“オフィス移転の自分事化”が社内にうまく浸透したプロジェクトだったと当時を振り返る。
「オフィス移転を自分事化してもらうための意識改革として、三井不動産ビルマネジメントの皆さまに「チェンジマネジメントプログラム」を実施いたしました。オフィス移転は会社が用意した新しくきれいな場所で働くという単純なことではありません。オフィス移転に伴い会社が新しく向かっていくべき方向性を全社員で共有していただく必要がありました。そのため全社員の中から選抜されたリーダーの方々を中心にオフィス移転の意味、目指す方向性、デザインの意図など様々な情報を伝えていきました」
これらのプログラムが功を奏し、三井不動産ビルマネジメントの中に新オフィスに向けたさまざまな分科会が独自に発足。社員全員の意識の中で、オフィスの移転は徐々に“自分事化”していった。
このプロジェクトが他にない事例として面白いのは、コンサルティング期間を経て新オフィスのデザイン・設計が進んでいく中で、三井デザインテックが三井不動産ビルマネジメントから逆プレゼンを受けたことだ。それは三井不動産ビルマネジメントの7部署それぞれが、仕事内容・働き方をふまえた自分たちの執務室コンセプトを提案するというものだった。もちろんデザインの方向性は三井デザインテックからすでに提案済みだったが、あえて自分たちのオフィスについて考える機会を設けたことで、三井不動産ビルマネジメント全社員の中に新オフィスに対する愛着が生まれ、オフィス移転はさらに自分事化していった。デザイナーの佐野翠氏は、依頼先からの逆プレゼンは初めての経験だったと振り返る。
「部署ごとに違う希望が出てきたので、それらの意見をまとめながら各フロアの計画を進めるのが大変でした。例えば9階は4部署が入るフロアだったので、それぞれ違う要望をデザインとしてまとめるのに苦労しました。カフェスペースがある8階は使用するチェアを社員全員による総選挙で決めたいと言われ、これも驚きましたね。でもこういう能動的なやりとりが結果的に新オフィスへの移転の“自分事化”を促し、同時に、三井不動産ビルマネジメントと三井デザインテックとの間に同じ目標に向かう者としてのチーム感が醸成されていったように思います」




サイン・植栽を担当した阿南琢真氏も、三井不動産ビルマネジメントの新オフィスへの情熱をとても感じたと言う。
「私はデザインの中でもサイン計画をメインに担当したので、プロジェクトには後半から参加したのですが、チームの情熱はすぐに感じました。まさに一丸となって取り組んでいるプロジェクトでした。全員が新オフィスへの移転を“自分事化”して考えているので意見も活発で、とても仕事がしやすかったですね」
設計を担当した西原惟仁氏も三井不動産ビルマネジメントとチームとして一緒に仕事ができたことを楽しかったと語る。
「移転先でも使用する家具が多く、何をどのように転用させるかなど、その整理と調整が大変でした。それでも一緒にワークショップをしながら、お互いに考え決めていけたことで、最終的な設計にとても満足してもらえました」
三井不動産ビルマネジメントと三井デザインテックは発注者、受注者という関係を超え、オフィス移転のプロジェクトメンバーとしてどちらも主体的に参加し、チームとしてお互いに意見を言いあう。そんな関係が築けたことが、現在、多方面から注目される新オフィスが完成した理由だとプロジェクトマネージャーの前田知志氏は分析する。
「三井不動産ビルマネジメントがこちらに寄せてくれた信頼は厚く、デザイン・設計・施工において、任せていただける部分も多くあった。だから自分たちも、その信頼に応えようと頑張ることができました。スケジュール調整やコスト管理など大変だったこともありましたが、辛いと思った記憶はない(笑)。とても楽しく前向きに取り組めたプロジェクトでした」
デザイン・設計が決まり、いよいよ施工という段階でチームに参加したのは、鈴木喬史氏と千葉大輝氏だ。施工現場の管理担当としてプロジェクトの後半からの参加だったが、「両社の関係が想像以上に良かった」と語るのは鈴木氏だ。
「お互いに話し合いながら、予算をかけるところ、コストを下げるところを決めていきました。私は本来、営業窓口なのですが、このプロジェクトは良い意味でみんなが窓口。各人が自分の専門分野に関しては、担当者として意見を言える関係性ができていた。両社間での目指すオフィスが共有できており、メンバー全員の意識が一体になっており良かったと感じる。」
2020年春、緊急事態宣言下で施工現場を管理したのは千葉氏だ。
「コロナ禍でも現場を止めずに進行させることには本当に神経を使いました。それでもこのプロジェクトの雰囲気の良さ、本当にいいものを作ろうという全員の熱意に、ある意味自分も酔って、とにかく最善を尽くそうと思いました。三井不動産ビルマネジメントはビルの運営管理を本業とする会社なのでオフィス施工のテクニカルにも詳しく、求められる課題が高度でした。そういう意味では自分のレベルを上げてもらったプロジェクトです。」
2020年6月、約2年間のプロジェクトを経て、三井不動産ビルマネジメントは日本橋に本社を移転させた。しかし移転はあくまでも通過点。新オフィスはここから発展して進化していく必要がある。今回のプロジェクトの成功の鍵、それは間違いなく“自分事化”。発注者である三井不動産ビルマネジメントの一人一人がオフィス移転を自分事化し、自分たちの新しい働き方、オフィスのあり方を考えたことで、三井デザインテックとの親密なチームワークも生まれ、全員が満足のいくオフィスを作り上げることができた。現在、この新オフィスは新時代のオフィス空間を模索するさまざまな企業から注目を集めており、三井不動産ビルマネジメントは付加価値を創造する企業として、新たなビジネスチャンスを生み出しているという。このオフィスで働くことを誇りに思いビジネスに取り組む姿勢が、企業の価値に繋がっているのだ。オフィス移転が変えるのは場所ではなく、そこで働く人のマインド。「ビジネスシーンの明日を変えていく」という三井不動産ビルマネジメントのブランドメッセージは、日本橋への本社移転を経て、さらに輝きを増していくことだろう。



