オフィーチェ

新しいワークスタイルを発信する【オフィーチェ】

三井デザインテック
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Future Articles

vol.13

Mitsui Fudosan Co.,Ltd. 「& オフィス」Project

2019年度 第32回「日経ニューオフィス賞 近畿ニューオフィス奨励賞」を受賞した三井不動産関西「&オフィス」。“つながる”ことをテーマにデザイン設計されたこのオフィスは、これからのオフィス像、新しい働き方、ビジネスのあり方を提案したとして、高い評価を得ている。リニューアル後は、グループ企業はもちろん、グループ外の来客も多いそうで、さまざまなコラボレーションとシナジー効果が生まれ始めているのだとか。大阪発信のオフィスイノベーションを紹介する。

エレベーターホールからの入り口となる落ち着いた雰囲気を放つレセプションエリア。

オフィスのデザインや設計を手がける人間にとって、もっとも大切なことは“聴く力”を持つことかもしれない。それはお客様のオーダーを聞く、という単純な意味ではない。新しいオフィスを造ることでその企業がどうなりたいのか、何を目指しているのか、言葉としてはなかなか表現されないオフィスへの熱い思いを正確に汲み取り、企業が進むべく未来を描く力が必要なのだ。今回紹介する三井不動産 関西「&オフィス」は、三井デザインテックの“聴く力”を存分に活かしてリニューアルを果たした、いま注目のオフィス空間。「つながる」ことをテーマとし、「オモロイもん」は「オモロイ環境」からうまれる、という遊び心あるデザイン・設計が話題になっている。今回のリニューアルを実現するにあたり、デザイン・設計を担当した三井デザインテックは“フルコンサルティング(コンサルティングからデザイン・設計・工事まで)”体制で支援を行なった。

三井不動産 関西支社から「旧態依然の働き方を変えたい。グループ会社や社外とのつながりをもっと大切にしたい」というオフィスのリニューアルが三井デザインテックに依頼されたのは、2018年春のこと。当時の関西支社は、同フロアに三井不動産レジデンシャル、サンライフ・クリエイションのグループ企業が集まっていながら、ほとんど交流のない状態だった。しかも、近隣ビルに入居する他のグループ企業とも交流は少なく、グループとしてのシナジーを発揮できないでいた。そんな状況を打開しようと「グループ企業がもっとつながり、ビジネスを発展させられるオフィスを作りたい」というのが三井不動産 関西支社からのオーダーだったのだ。しかも、三井デザインテックのフルコンサルティングを受けてその良さを体感し、自らのテナント営業にもグループ企業の力を活かしていきたい、と考えていたそうだ。

コンサルティングを担当した木下貴博氏は、当時を振り返る。「関西支社のリニューアルテーマは“グループシナジーを上げるためのコラボレーションの実現”でした。ただ、一言でコラボレーションと言っても、それを表現するデザイン・設計の方法はさまざまで、三井不動産が求めている本質がどこにあるのか、まずはコンサルティングで見極めていく必要がありました」。リニューアルオフィスの完成までにかかった期間は約10ヶ月。最初の4ヶ月間はコンサルティング期間としてじっくり話を聞き、三井不動産が求めるコラボレーションの概念を少しずつ明確にしていった。そして“つながる”という考え方を共有し、リニューアルすべき本質が見えてきたところで設計担当の平田裕亮氏、西原惟仁氏がチームに加わった。その後デザイナーの木野田千晴氏も加わり、具体的なリニューアル案の提案に至る。工事期間は3ヶ月間だけなので、なんと工事までの7ヶ月間をコンサルティングやデザイン・設計に費やしたことになる。三井不動産 関西支社の思いを具現化するために、フルコンサルティング体制で、目指すべき未来をじっくりと紐解いていった期間があったからこそ、デザインも設計もスムースに受け入れられたという。しかも、無難なものより遊び心のある提案を選んでくれたというから、三井不動産のリニューアルへのモチベーションの高まり、そして三井デザインテックへの深い信頼を感じる。コンサルタント、デザイナー、設計者が一体となって、三井不動産と丁寧にコミュニケーションをとっていった賜物だろう。

コラボレーションエリアはフロアの中心に配置されていて、グループ各企業のエリアから自由に出入りすることができる。
“つながる”オフィスの象徴でもあるコラボレーションエリア。ここから多くのシナジーが生まれる。
人工芝を敷き、パターゴルフも楽しめるプロジェクションエリア。

設計担当の平田氏は三井デザインテックのフルコンサルティングの特徴を以下のように語る。「コンサルティングによって目指すべきオフィスの方向性が見えてきたら、より具現化するために僕たちも一緒に動き始めます。この”一緒に動く”というのが他者と大きく違うところで、コンサルティングと設計・デザインが常に情報共有しながらスピードとクオリティを保つことができるのは、三井デザインテックのフルコンサルティングの強みかもしれません」。同じく設計担当の西原氏もチームで動く良さを実感する。「無駄と思われる部分を弊社のスキームを使って可視化しました。その結果、不必要な会議室を減らすことに合意いただきました。そして会議室を整理できたことで、グループ企業がオープンに集まることができるコラボレーションエリアをゆったりと造ることができたのです」。そしてデザイナーの木野田氏は「コンサルティングの中で獲得したチームの信頼により、大阪の歴史や文化を紐づけた話題性のある大胆なデザインを提案することが出来た。」と語る。

営業担当として三井不動産の細かい要望に対応した片山裕司氏によると、「&オフィス」は現在、関西エリアのオフィスビルの中でダントツで注目を集めているそう。「当初の狙い通りグルーブ企業が集い、会話が生まれるオフィスになった。コラボレーションエリアには外部からのお客様の来訪も多く、関西有数のクリエイティブな空間になっています!」。

「&オフィス」は2019年8月、第32回日経ニューオフィス賞を受賞した。新たなオフィス像を感じさせるデザイン・設計が高く評価された結果である。“働き方を変えたい”と考え始めた企業の声にじっくりと耳を傾け、その本質を紐解くことから始まった「&オフィス」プロジェクト。大阪発信の”つながる”オフィスイノベーションは、いま、次々と新しいシナジーを生み出している。

グリーンのアレンジメントはグループ各社の社員たちが、自らワークショップを重ねて選び配置したのだとか。まさに“つながり”の結晶だ。
三井不動産が使う会議室は御堂筋や堺筋など「筋」の名前、三井不動産レジデンシャルが使う会議室は四つ橋、なにわ橋など「橋」の名前が付けられている。室内の装飾もそれにちなんだデザインになっている。
靴を脱いでリラックスできるリフレッシュルーム。調光機能付きなので、瞑想や仮眠に利用できる。

New Relationships

vol.13

産学共同研究「オフィス内コミュニケーションの効果」

経営課題の1つとして「社内におけるコミュニケーションの活性化」をあげる企業が多くみられます。弊社で働き方のコンサルティングを実施する際に部門を超えたコミュニケーション、縦横のコミュニケーションの活性化などの相談を受けることも多々あります。コミュニケーションの重要性は様々なところで言われており、コミュニケーションが活性化することによる効果も想像する事は出来ますが、実はオフィスにおけるコミュニケーションの効果を示す研究はあまり見る事が出来ません。そこで今回は、コミュニケーションの専門家でもある東洋大学の榊原准教授と共に行った「オフィス内におけるコミュニケーションの効果」に関する産学共同研究についてご紹介致します。

まず、本研究では、〝オフィスでのコミュニケーション″を〝組織内コミュニケーション″と捉え「組織およびそれを構成する個人の目標達成のために、情報伝達・共有、相互理解、意思疎通を行うこと」と定義致しました。研究の対象として、首都圏(一都三県)の事業所規模100名以上のオフィスに勤める25-59歳の会社員・会社役員 2036名に対し、インターネットアンケートにて調査を行っています。

本研究では3つの効果を測定することが出来ました。

Ⅰ.Face to Faceによるコミュニケーションの効果
日本では、働き方改革に伴う柔軟な働き方への施策としてテレワークや、在宅勤務制度などを導入する企業も多く見られるようになってきました。一方で、アメリカをはじめ欧米諸国では既に1990年代頃よりテレワーク制度は広く普及していますが、近年、IBMやヤフーなどでのテレワーク制度の廃止や、縮小などが話題になりました。その背景には、企業により様々な理由がありますが、共通しているのはFace to Faceのコミュニケーションの減少があると思われます。個人の効率的な働き方が求められる一方で、コミュニケーションの重要性は増しています。では、「リアルなFace to Faceによる効果」は実際にどの様なものがあるのか、様々なコミュニケーション手法と比較して見てみたいと思います。(表1)

「Face to Face・メール・電話・チャット・ビデオ会議」の5つのコミュニケーション手段の使用頻度に応じて効果を比較してみますと、3つの項目に違いが見られました。まず、「ワーク・エンゲイジメント(仕事に対する熱意・活力・没頭の状態)」については、Face to Face・チャット・ビデオ会議に相関が見られました。この3つの手段に共通しているのは、リアルタイム性・インタラクティブ・多人数での対応が可能という点です。その中でも最も強い関係性が見られたのが、Face to Faceです。次に「職場内自尊感情(組織や同僚から認められているという感情)」については、Face to Face・メール・電話の従来からあるコミュニケーション手段に相関が見られました。この3つに共通しているのは、利用頻度の高さ、利用しやすさです。ここでもFace to Faceが最も組織・同僚から必要とされていると感じやすいという結果となりました。3つ目の「組織シチズンシップ(組織への自発的な貢献)」については、唯一Face to Faceのみに関連性がみられました。つまり、これらの結果から、Face to Faceのコミュニケーションを多くとるワーカーほど組織や同僚から認められていると感じ、ワーク・エンゲイジメントも高く、自発的に組織に貢献する行動をとると言えそうです。リアルなFace to Faceのコミュニケーションは、個人と個人・個人と組織の関係性において最も効果を生みだす重要な手段と言えるのではないかと思います。

Ⅱ.コミュニケーションの円滑さが組織にもたらす効果
次に、コミュニケーションの円滑さは組織にどの様な効果をもたらすのか見ていきたいと思います。榊原准教授の研究テーマである「参加的組織風土(風通しのよい組織)」は、正に組織コミュニケーションの円滑さを図る適切な尺度だと言えます。具体的には、「良好なチームワーク」「組織への信頼」「会社や仕事に関する十分な情報伝達」「社員の発言の重視」などの項目によって構成されています。この尺度(設問項目)を使用し、組織におけるコミュニケーションの状態と効果の相関性を分析してみました。(表2)

様々な効果を検証しましたが、明確な相関がみられたのが「ワーク・エンゲイジメント」「心理的ストレス反応(ストレスの低下)」「組織シチズンシップ(組織への自発的な貢献)」の3点でした。コミュニケーションが円滑な風通しのよい組織では、仕事に対する意欲を高め、自発的な組織への貢献に繋がり、ストレスも軽減される傾向が表れることが分かりました。

Ⅲ.コミュニケーションを高めるオフィス
では、コミュニケーションを円滑にするオフィスとはどの様な空間なのでしょうか?以前本誌面でも取り上げた、三井デザインテックがオフィスに重要と考える「8つの要素」と前述の「参加的組織風土(風通しのよい組織)」との相関を見てみました。その結果、〝8つの要素が高いオフィス″で働くワーカーの方が、組織の風通しがよいと認識していることが分かりました。またその様なオフィスでは、「職場のソーシャルサポート(職場での助け合い)」を受けやすいことが分かりました。(表3)(表4)

今回の研究から、組織の良好なコミュニケーションは、「個人の仕事への意欲向上」「ストレスの軽減」「組織への貢献」と関連性があることが分かりました。今後、日本ではテレワークの普及をはじめ、柔軟で多様な働き方はより一層広がっていくことと思います。一方で、ワーカーにはより複雑で創造的な仕事が求められ、その為には職場でのコミュニケーションが一層重要となります。今後、リアルなFace to Faceのコミュニケーションをとる事が出来るオフィスの役割は、一層高まっていくでしょう。

東洋大学 社会学部 社会福祉学科
榊原 圭⼦ 准教授
⼤⼿都市銀⾏および世界有数の戦略コミュニケーション・コンサルテイング会社Fleishman-Hillard Japan勤務後、東京⼤学⼤学院医学系研究科進学。同研究科客員研究員等を経て、現在は東洋⼤学社会学部にて准教授を務める。博⼠(保健学)。
専⾨領域︓組織内コミュニケーション / 働く⼈のストレスと健康 / キャリア発達 /ワークライフバランス など

Offistyle+

vol.13

自然を取り入れると働き方が変わっていく

新潟県三条市にある「スノーピークHeadquarters」には、クリエイティブ部門を中心とした社員が常駐している。通常のデスクワークエリアに隣接して、キャンプ用品がレイアウトされた空間が広がり、会議をしたりランチをとったり、自由に使っているそうだ。

スノーピークビジネスソリューションズのサービスについて教えてください。

村瀬社長(以下、敬称略):大きくは4つの事業に分かれます。自然の中で時間と場所にとらわれない働き方の体験を提案する研修サービス、オフィス家具としてのアウトドア製品の販売、キャンピングオフィスを体験してみたい企業へのアウトドア製品レンタルサービス、そして自然から得られる感性とITから得られる生産性を活用して企業が抱える課題を解決するコンサルティングサービスです。

村瀬社長はもともとITコンサルティングの会社を経営されていたわけですが、アウトドア×オフィスという発想はどこからきたのでしょうか?

村瀬:ある時、自分たちが提案したITシステムがお客様の現場にあまり定着していないように感じたんです。導入当初は喜んでいただけたものが、実際は機能していない。それはなぜか。考えた末に行き着いたのは「共創」という発想でした。こちらの考えを押し付けるのではなく、一緒に解決策を模索していく方が、結果、うまくいくということに気づきました。ビジネスにおいては、“いい関係を築く”ことがなによりも大事だと。そこでまず、自分たちが変わらないといけないと思い、社内の人間関係を良くするためのアイデアを次々実践していったんです。そして、仲間と一緒に特別な時間を過ごすということを一番象徴するのがアウトドア、つまりキャンプではないかと思ったんです。

なるほど。それでオフィスのあり方や働き方にアウトドアのエッセンスを取り入れていくことを考えられたのですね。

村瀬:大自然のなかでおこなうキャンプは、五感の刺激が健全になります。地球環境を考えるきっかけにもなる。アウトドアに身を置く、自然に触れるということに、圧倒的な意味があることに気づいたんです。

そして、スノーピークと新会社を作ることになったのですね。

村瀬:山井社長(スノーピーク代表取締役CEO)にお会いして、こんなに波長があう人がいるのかというくらい盛り上がりました(笑)。2回目にあった時にはもう「一緒に新会社を作ろう」ということになっていました。

2019年8月にオープンしたばかりの「Snow Peak MUSEUM」。スノーピークの過去、現在、未来が表現されていて、キャンプをしない人も十分楽しめる。ユーザーから寄贈されたという製品とそのエピソードが味わい深い。
外からの光がたっぷりと差し込む設計で、広々と明るいオフィス空間だ。自然を感じながら開放的に仕事をすることができる。

この1〜2年、オフィスにアウトドア空間を作る企業が本当に増えましたね。働く場に自然のエッセンスを取り入れると、働き方はどう変わっていくのでしょうか?

村瀬:確かにアウトドアや自然のエッセンスをオフィスに取り入れる企業は増えましたね。殺風景な会議室より、テントや焚き火テーブルの前で話し合う方が楽しい時間になる。例えば焚き火テーブルを囲んでのミーティングは、リラックスして会話をしたい時に最適。漠然としたものを言葉にしあう、そんな会議をする場所として考えればいいでしょう。オフィスの中でバーベキューはできませんが、コーヒーを自らドリップして飲む、というアクションはできますよね。それだけでもアウトドアのエッセンスを感じることはできる。コミュニケーションもクリエイティビティも、きっと触発されます。
自然の中にいれば、誰だってリラックスします。そのエッセンスがオフィスの中にある、ということです。都心のオフィスにアウトドア空間が出現していくことで、エッセンスではなく本当の自然に親しもうという人たちがもっと増えてくると思う。そうなれば嬉しいですね。
いずれ、何が何でも都心で働く、という時代は終わるでしょう。都心と地方、オフィスとテント、働く場所は必要に応じて自由に選ぶ時代がくると思います。

そういえばスノーピークビジネスソリューションズの働き方も、とても自由だそうですね。

村瀬:勤務地という概念を変えていこうとチャレンジしています。オフィスに出社しなくても、自宅でもカフェでも、山に行ってもいい。無理やりオフィスに来ても生産性は上がらない。要は、自分が最高のパフォーマンスができる場所を選んで仕事をすればいいんです。新しいワークスタイルを提案する部門として、グループの中でも先進的な働き方をどんどん取り入れています。

最後に、これからのオフィスのあり方や働き方についてメッセージをください。

村瀬:コワーキングやワーケーションなど、新しい働き方が注目されていますが、表面的な流行で終わらず、本質的なものになって欲しいですね。AIなどでテクノロジーが更に進化するこの時代は、産業革命くらいに大きな変革だと思うんです。だから今までの概念にとらわれていてはダメ! 自分らしい働き方を見つけて欲しいですね。

広大なキャンプフィールドでは、実際に製品を設営してキャンプすることもできる。
2階にはワークショップや勉強会などが開けるイベントスペースがある。
窓からは広大なキャンプフィールドが見える。
ランチは自炊してみんなで食べることも。
屋外にテーブルと椅子を並べ、ワイワイと楽しい時間を過ごす。
村瀬 亮
株式会社スノーピーク取締役CTO
株式会社スノーピークビジネスソリューションズ代表取締役

1963年愛知県岡崎市生まれ。愛知大学卒業後、証券会社で働き、その後キーエンスに転職。名古屋営業所長を務めた後、1999年に起業。IT関連のコンサルティングサービスをおこなう。アウトドア×オフィスで世の中の働く意識を変えていこうと、2016年、株式会社スノーピークと共同出資で、株式会社スノーピークビジネスソリューションズを設立。代表取締役に就任。
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