オフィーチェ

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三井デザインテック
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New Relationships

vol.18

世界の最新情報からオフィス・トレンドを探る

ハイブリッドワーク時代におけるワーカー同士のコミュニケーションの重要性とは

研究背景
新型コロナウィルスのパンデミックを経て、多くの企業でオフィスワークとリモートワークを組み合わせたハイブリッドワークが浸透しました。ワーカー自身の状況や業務内容によって働く場所を選択できるハイブリッドワークは業務効率や生産性を高める一方、気軽な会話や何気ない雑談の機会が少なくなったと感じている方も多いのではないでしょうか。私たちが日々の業務でチームワークを発揮するためには、ともに働くメンバーのことを理解し、つながりを醸成していくことが大切です。そこで三井デザインテックでは東洋大学 榊原圭子准教授とともに、ワーカー同士のつながりを醸成する職場のコミュニケーションのあり方を調査するためネットリサーチ(アンケート調査)を実施し、回答結果をもとに研究に取り組みました。(表-1参照)

調査研究結果
ワーカー同士のつながりは個人や企業にポジティブな影響をもたらす

最初にワーカー同士のつながりが企業や個人に対してどのような効果をもたらすのかについて分析を行いました。ワーカー同士のつながりの測定には「共に働く姿勢」や「互いに理解し認め合う」といった質問項目からなる「日本版職場のソーシャル・キャピタル尺度」を使用し、重回帰分析を用いてワーカー同士のつながりがウェルビーイングやクリエイティビティといった心理尺度に及ぼす影響を調べました。その分析から、ワーカー同士のつながりは個人のウェルビーイングやクリエイティビティ、ワークエンゲイジメント、組織へのコミットメントなど、個人や企業に対して良い影響をもたらすことが明らかになりました(表-2参照)。私たちが日々の職場での経験を通じて感覚知として認識されている内容が、改めて数値をもとにした論理知としても示された結果だといえます。

ワーカー同士のつながりを醸成するには、業務の話だけではなく雑談も重要

ではそのワーカー同士のつながりを醸成するには、どのようなコミュニケーションが必要なのでしょうか。今回の研究ではワーカー同士のコミュニケーションの頻度と手段に注目しました。コミュニケーションの頻度は、業務の情報共有の頻度と雑談の頻度の2通りに分け、その影響について重回帰分析を用いて調べました。分析の結果、業務の情報共有・雑談の頻度どちらもワーカー同士のつながりの醸成に効果があるということが分かりました(表-3参照)。雑談の頻度よりも業務の情報共有の頻度の方が影響度合いは大きいのですが、チームで仕事を進めるうえで業務の情報共有を行うのは当然と言えるでしょう。業務の情報共有に加えて雑談も交わすことが、ワーカー同士のつながりをより強くするうえで重要だと言えます。

対面のコミュニケーションは効果的だが、より重要なのは様々な手段を使い活発にコミュニケーションをとること

 コミュニケーション手段の分析では、対面・電話・ウェブ会議・メール・チャット/SNSの5つに対し、業務の情報共有と雑談それぞれどの手段で行っているのかを調査し、それらの利用状況がワーカー同士のつながりにどのような影響を与えているのかを調べました。業務の情報共有と雑談どちらも対面でのコミュニケーションの影響が最も高いという結果でしたが、ただ働く場所が多様化する中、常に対面でコミュニケーションが取れる訳ではありません。そこで、業務の情報共有と雑談それぞれでワーカーのコミュニケーションの取り方についてクラスター分析を用いて4つのタイプに分類し、それぞれのタイプごとにワーカー同士のつながりの差を調べました。分析の結果、業務の情報共有と雑談どちらも様々な手段でコミュニケーションを活発に取っているタイプが最もワーカー同士のつながりが高いことがわかりました(表-4参照)。

❸ まとめ
今回の研究では、業務の話だけではなく雑談も行うこと、様々な手段でコミュニケーションを活発に取ることがワーカー同士のつながりを醸成するうえで重要であることが分かりました。今後ハイブリッドワークが普及していく中で、チームで円滑に仕事を進めていくためには、ワーカーは意識してコミュニケーションをとることが大切になってきます。同時に企業はワーカー同士がコミュニケーションを取ることを促進していかなければなりません。ワーカーが対面で集まることのできるオフィスにコミュニケーションが取りやすいスペースを設ける、あるいは定期的にワーカーが集まるイベントを開催するなど、ワーカー同士がつながりを醸成し、チームワークを高めることを支援することが、今企業に求められている役割なのかもしれません。

調査概要
手法:インターネットアンケート調査 回答者数:2212件
調査期間:2022年10月6日~10月10日
対象者:東京23区内事業所規模100名以上のオフィスに勤めるホワイトカラーの25~59歳の男女

共同研究者
東洋大学 社会学部 社会心理学科
榊原圭子 准教授
⼤⼿都市銀⾏および世界有数の戦略コミュニケーション・コンサルテイング会社Fleishman-Hillard Japan勤務後、東京⼤学⼤学院医学系研究科進学。同研究科客員研究員等を経て、現在は東洋⼤学社会学部にて准教授を務める。博⼠(保健学)。
専⾨領域…組織内コミュニケーション / メンタリング / 働く人のストレスと健康 / キャリア発達 /ワークライフバランス など
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