オフィーチェ

新しいワークスタイルを発信する【オフィーチェ】

三井デザインテック
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Future Articles

vol.6

ALWAYS IN BETA

株式会社ニューバランスジャパン

ニューバランスの新しいブランドプラットホーム“ALWAYS IN BETA”。
そこには“私たちは常にもっと進化できる「BETA版」である”という意味が込められている。
進化を加速させ、次のステージへ向かうため、
株式会社ニューバランス ジャパンは本社の移転を決めた。
そして、誕生したのがコミュニケーションを生むオフィスだ。

壁のレンガはマンチェスターのオフィスやショールームにも用いられているマテリアル。赤はニューバランスのコーポレートカラー。それらを生かしながらデザインを提案。「ニューバランスの世界観を伝えるスペースになったと思います」(松田氏)

スポーツシーンはもちろん、ファッションアイテムとしてのスニーカー人気を牽引するニューバランス。同社では、社員数の増加によってオフィスが手狭になったこと、新たなステージに向けてブランドイメージにあった場所に本社を置きたいと考えたことから、2015年1月にオフィス移転プロジェクトが立ち上がった。目指したのは、コミュニケーションが生まれやすいオフィス。その実現に向け、プロジェクトの一端を三井デザインテックがサポートした。

まず提案したのは“ALWAYS IN BETA”というニューバランスの新しいブランドプラットホームとオフィスのコンセプトを合致させること。オフィスエリアを担当したデザイナーの大磯氏は、「“ALWAYS IN BETA”というコンセプトからアグレッシブなイメージを受けたので、それを軸に“未完成”というデザインキーワードを設定し、ファブリック選びなどに反映させました。例えば、植物は伸びていくので未完成のものといえます。それを、スポーツブランドらしさを表現するトラックと組み合わせました」と話す。実際に使用されたのは人工芝だが、キーワードをうまくデザインに落とし込み、ひと際目を引くスペースを完成させた。そして、ここは「個の空間を確保しつつ、共有スペースはオープンに使いたい」という要望に応える空間にもなっている。

顧客担当者向けのショールームの実施設計を担当した釣氏は、ニューバランスの専属デザイナーとテレビ会議をしたり、選んだ素材を現地に送って確認してもらったり、細かい調整を繰り返した。そのような中、なにか新しい提案をしたいと常に考えていたという。「ショールームは2つあり、1つはすべての商品が並ぶ従来型の大きなスペース。そして、もう1つはそれより小規模で、ライフスタイル関連のアイテムを届けるための空間。今後さらに力を入れていく分野と聞き、そこにアイデアを盛り込みました」と語る。

シューズのソールでつくられたニワトリ。海外のオフィスにも同じようなオブジェが飾られているのを知り、日本にも取り入れた。使用したソールは1,000枚以上。ひとつひとつタッカーで留めていった。「ニューバランスの方にも参加していただき、作業を通して仲間意識のようなものが芽生えたように思います」(松田氏)
ライフスタイル分野を扱うショールームの一角にアパレルショップをイメージしたナチュラル系を取り入れた。「アパレルの顧客担当者さんに向け、ショップに商品を置いた時の見え方が想像しやすくなるようにと提案しました」(釣氏)

さらに、デザイン全体のディレクションとエレベーターホールのデザインを担当した松田氏は「同社の海外オフィスやショールーム、ニューバランスのコーポレートカラーを踏襲しながら、各々がたくさんのアイデアを出した結果、良い空間ができあがったと思います」と振り返る。

それらのデザインを現場でかたちづくる工事を担当した鈴木氏は「今回のプロジェクトでは提案の段階から打ち合わせに参加し、お客さまの生の声を聞かせていただいたことで、オフィスの使い方をより理解したうえで現場作業ができました」と話す。さらに「今回のプロジェクトでは、部署や立場の違いを越えて意見が言え、ひとつのチームとしてのまとまりがありましたね」とも。チームワークの面では、「工事はもちろん、デザインが必要になればそれも対応できる。それらが一体となってスピード感をもってできたのが良かったですね」と大磯さんも言っていた。
「積極的に動いてくれるスタッフが社内にいて、お客さまからの要望や課題に応えられたことが満足度に繋がったのだと思います。大変なこともたくさんありましたが、いい仕事、いい空間が提供できました」と話すのは、プロジェクト成功に向けて奔走した営業の中牧氏。海外オフィスにも足を運び、密な関係を築いていった。「マンチェスターにあるオフィスの視察に同行し、その世界観をどのように取り入れるかについて話し合えたことが多少なりと安心感につながったのではないでしょうか」と言う。実際、ひとつのプロジェクトは終了したが今も良好な関係が続いているという。スタッフ全員の誠実で確かな対応力とフットワークの良さによって信頼を得た結果といえるだろう。

エレベーターホールのタイルに書かれたCORE VALUES。さり気ないながらもおしゃれなタイポグラフィが世界観とマッチ。
社員が集える多目的スペース。人工芝を敷き、トラックは本物と同じ幅にした。「プライバシーを確保しつつ、社員が交流できる場所を求めていたので、みんなが集まれる場所をつくりました」と大磯氏。
ニューバランスの担当者が三井デザインテックのオフィスを気に入り、取り入れたという。
エントランス正面にはモニターを設置。ニューバランスの世界観を表現する映像などが来客を出迎える。
4台を斜めに配置することでモニター自体がオブジェのような印象になるとともに、そこに流れる映像の魅力も増す。
左から)中牧潤平氏、鈴木喬史氏、松田豪氏、大磯祐子氏、釣真央美氏

New Relationships

vol.6

世界の最新情報からオフィス・トレンド を探る

オフィス変遷

働く環境を取りまく変化は非常に早く、今まさに、大きな変革の過渡期を迎えていると感じます。本シリーズではこれまで、オフィスのトレンドや新しい働き方の取り組みなどをご紹介してきましたが、今回は時代を遡り、過去から現代に至るオフィスの変遷をご紹介します。

1960年代
スチール製デスクを教室型にレイアウト
1960年代は、アジア圏で初めてとなる東京オリンピックが開催され、また日本初の超高層ビルとして知られる霞が関ビルディングが竣工するなど、まさに高度経済成長期でした。 大量生産の時代で、物はつくればつくるほど売れていき、働き方もいかに多くの物を生産していくかに重きが置かれていました。
オフィスは、グレーのスチール製デスクを教室型レイアウトに配置し、上司の管理下で、主に事務的な業務がそろばんなどを使用した手作業で行われていました。(写真1)

1970年代
事務機器の普及と島型配置の登場
1970年代は、ベビーブーム、ビートルズ解散、カップヌードル発売、コンビニエンスストアの出現など、2度のオイルショックに見舞われながらも生活が豊かになった時代でした。 産業構造が第三次産業にシフトし、また管理部門、開発部門などが多くの企業に設けられ、オフィスの重要性が増した時代でもあります。
この頃、オフィスには電卓、複写機などの事務機器が普及し、事務作業が飛躍的に効率化されました。オフィス空間においても、ベージュなどの温かみのある色が使用されるようになり、レイアウトもいまだ主流となっている島形が多く見られるようになってきました。(写真2)

1980年代
OA化によって進んだ機能的な設備の導入
1980年代後半からバブル崩壊までの期間は、経済の拡大によりオフィスの人員が大幅に増加し、業務量の増加とともに深夜までの残業も常態化されることが問題となっていました。
一方でポケットベル、FAX、PCなどによるOA化がさらに進み、仕事もより効率化が図れるようになっていきます。 オフィス空間においては、PC設置に対応するような奥行きがあり、高さの低いデスクや、エルゴノミクス(人間工学)を考慮した椅子、フロアカーペットやデスクパーテーションなども導入されてきました。(写真3)

(写真1)
(写真2)
(写真3)

1990年代〜2000年代前半
変化に強いユニバーサルレイアウトの増加
1991年のバブル崩壊により、日本経済はマイナス成長期に入ります。リストラで失業率が上昇し、企業はコスト削減、効率化を重視するなど、多角経営から事業集約に経営の舵を切ります。
携帯電話、ネットワークPCの普及にあわせて、オフィス空間も変化していきました。人事異動や組織改定に大きなレイアウト変更が不要となるユニバーサルレイアウトの導入、現在とは目的の異なる省スペース化を主としたフリーアドレスなどを取り入れる企業が増えていきました。(写真4)

2000年代前半〜現代
創造的な発想を生むためのオフィスへ
2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災など、景気や環境の不安定さが生じるも、2012年のアベノミクスなどで経済も回復基調が少しずつ見られるようになりました。一方で、企業は環境問題、BCP、セキュリティ、コンプライアンス、グローバル化、ダイバーシティなど、より複雑化した課題に直面するようになっています。
オフィス空間においては、企業の目的にあったワークスタイルを実現する場へと変化しており、単に効率的に働くのではなく、いかに創造的な発想を生み出せるかもオフィスに求められています。(写真5)

時代とともにオフィスに求められる課題と役割は高度化・複雑化してきています。過去においては、生産性を高めるためにより効率的に働くことを目的としていましたが、この複雑化した現代社会においては、それだけで差別化を図ることは困難になっています。企業が差別優位性を維持していくためには新しい価値創造が必要であり、オフィスも新しいアイディアや知識を生み出し、より創造的に働ける場へと変化させていくことが重要になります。企業にとってオフィスは“コスト”から“投資”へと変わり、経営資源の大きな“ツール”となってきているのです。

(写真4)
写真協力:株式会社岡村製作所(写真1〜4)
(写真5)
写真協力:株式会社コロプラ

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